菓子工房オークウッド(埼玉・春日部) ★★☆☆☆

casa_kyojin2012-05-09


オーナーシェフの横田秀夫が、パークハイアット東京を退職した時、それが独立開業に向けたものだということで、しばらくは気をもんでいた。

そして、やっと開業のニュースが聞こえてきたとき、それが埼玉・春日部ということで、ずいぶんガッカリしたものだ。
なかなか足を伸ばせる距離ではない。
実際、店を訪問できたのはまだ一度だけで、あとはごくたまに大宮のエキナカにイベント出店するタイミングを楽しみにしている。

ともあれ、ガーデンのハーブやベリーと共にある店づくりを指向したとのことなので、こうしたロケーション選びは、必然だったのだろう。
広い敷地の中にたくさんの植物が育ち、通路の傍らであたりまえのように果物が実っていたりするなんて、とても素敵なことだと思う。

カントリーサイドの気取らない店、それでいてクオリティが高いという、なんともご近所さんにはうらやましい店だ。
ケーキも、焼き菓子も、しっかりした仕事と、華美なところのない堅実さが好感を持てる。

しかし、併設されているカフェがいけない。
常に満席が当たり前の賑わいで、それもそのはず、持ち帰れないデセールはとても美味しい。
しかし、出てきた紅茶に仰天した。
カフェの紅茶に失望することはよくあるけれど、ここまでひどいものが出てきたのは初めての経験だった。

アンリ・シャルパンティエ銀座本店でも、紅茶という名の色水が出てきたが、それでも一杯くらいは我慢して飲むことができた。
しかしこのカフェの紅茶は、一口含んで即、カップに戻したくなるくらい、香りも味も無い上にぬるい、というカフェの仕事としてはあまりにもヒドい代物だ。

黙ってコーヒーを注文しなおしたが、あまりの酷さに会計時にバリスタに話を聞いた。
彼は、茶葉へのこだわりと、お湯の温度について語ってくれたが──その温度、94℃だというのだから、話にならない。
完全に沸騰していない湯で入れた紅茶が、どこの世界にあるのだろう。

もちろん沸騰こそしていても、ポットなどにかけっぱなしで酸素が抜けてしまい、ジャンピング不足になった結果としての残念な紅茶は出す店は本当に多い。
しかし、そんな中途半端な温度の湯を注いでしまえば、コーヒースタンドで出てくるティーバッグ以下の色水になるのは当然だ。

カフェ限定のデセールには、本当に魅力的なメニューが多いのだけれど、ここでは決して紅茶をたのんではいけない。
頼み直したコーヒーは、まあマシンで入れたものとして月並みなものだったので、無難だとは思う。
しかし、自家製ジャムのソーダ割りといったスペシャリテを頼んでいたら、評価は全く違ったのかな──と素直に期待したい気持ちは大きい。それだけ、この店のお菓子は、魅力的だ。
ケーキや焼き菓子の持ち帰りだけなら、★4つ。
カフェには★1つ。
総合で★2がギリギリといったところか。

しかし、あの紅茶で金をとっているというか、客に出しているカフェは言語道断だと思う。
横田秀夫その人は、あの紅茶を飲んだことがあるのだろうか。


■横田秀夫「菓子工房オークウッド 初夏〜春までの季節感たっぷりレシピ」