「差別的」という「差別」

『差別的と判断した「メクラ」「オシ」「ミツクチ」など九つの語』を、「言い換える」との話。
曰く「見聞きした人を精神的に傷つけたり、不快感を与えたりすることがある」


しかし、追放するべきは「差別」という構造、概念そのものであり、便宜上のツールとしての「言葉」ではないだろう。
それでは、人が罪に対して取るべき態度が「懺悔」ではなく「免罪符の購入」こそが正しい、という偽善と同じ構造になってしまう。

その人が盲人であることを受け入れ、理解した上で「メクラの○○さん」と言ったとしても、それは「差別語」の存在故に「差別」

そして、「○○さんは目が不自由だから」と、上から見下げたものの言い方をしたとしても、言い換え語を使っているから「差別ではない」となってしまえば、全くアベコベだ。



それでいて、いわゆる「差別語」や「言葉狩り」というものに熱心な人たちは、言葉そのものの意味については無神経な一面もあったりする。

例えば、ここで上げられている「メクラ」はあくまでも盲のことであり、「オシ」は唖のことだ。

ところが、例えば聾(つんぼ)の人を「聾唖者(ろうあしゃ=つんぼで、おし)」と言ってしまうことに無頓着なメディアはとても多い(拙blog「PCの中にある差別 3」)

あちこちで無造作に使われている「オカマ」という言葉にしても、もともとは「男装の街娼」を指すのだから、同性愛者やクロスドレッサー、ニューハーフといったセクシャルマイノリティを十把一絡げに「オカマ」と呼ぶのはひどく暴力的だ(拙blog「PCの中にある差別 1」)



差別語を言い換えるような虚飾で、差別そのものの本質がどんどん覆い隠されていくことには切実な危機感を感じる。
差別そのものを無くすことはもちろん難しい。
だからといって「臭いものにフタ」をしたところでその場限りのごまかしで終わってしまうだけだ。

理想というものは、高く掲げてこそのものだろうし、それに向けて前進して行こうというのが人と、その社会というものではないのか。


言葉狩り」で上品ぶる偽善者たちに正義は無い。

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バカジャコ」はダメ、差別語含む魚30種を改名へ

日本魚類学会(松浦啓一会長)は、「バカジャコ」「イザリウオ」など差別的な言葉を含んだ魚の標準和名を改名する。

見聞きした人を精神的に傷つけたり、不快感を与えたりすることがある上、博物館や水族館などが別名への言い換えをバラバラに行う例も多く、混乱を解消すべきだと判断した。今月中に正式決定する。動植物や昆虫などにも差別語を含んだ標準和名が多いだけに、他学会にも影響を与えそうだ。

改名するのは、日本魚類学会標準和名検討委員会が差別的と判断した「メクラ」「オシ」「ミツクチ」など九つの語を含む魚で、日本産の魚類約3,900種のうち30種が対象。同様の言葉が「種」より上位の「属」や「科」などの分類単位に使われている例もあるため、計49の標準和名を同時に改名する。(1月6日16時9分:読売新聞)