ああムラカミよ、君を泣く

前項は、以前SNSに書いた日記を加筆改稿したものなのだけれど、オープンスペースでこのテーマについて触れようと思った直接のきっかけは、はてなキーワードから偶然たどりついた「村上モトクラシ」のblog「村上モトクラシ大調査」だった。

村上春樹本人も登場するかも?」とあおられ続けてきたこのサイトで、やっとご本人からのメッセージがアップされたところを見つけて喜び、そしてスクロールして読んだ前の日の記述に、ゲンナリさせられてしまった。

「モトクラシ大調査」番外編、再びです。 先日梅田望夫さんからMusical Batonをまわしていただいて、ワタクシも回答を書かせていただきました。バトンを受け取ってくださったtouko_yuzuさん、金さるさん、drunker-junkerさん、岡田昇さん、Piccoliさん、勝手にまわしてすいません。ありがとうございました。


かくもラジカルな週刊新潮を擁する新潮社も、文芸担当者となるとこういうものか、と嘆息した次第。

何も、ネットの隅っこの世捨て人と同じように、「バトン」に批判的であるべし、と言っているわけではない。
大メディアの社員とおぼしき担当者が、ハンドルではあれ、それと固定できるキャラクターで、不特定他者に何かを強要しているとなると、いささか軽率なんじゃないだろうか……ごく控え目に言って。

「勝手にまわして」おいて、それが受け入れられたから「すいません」「ありがとうございました」……これでは居直り強盗だろう。
それとも、ムラカミ読者なら、ムラカミ担当者からの「バトン」をありがたく拝領し、速やかに適宜回しつかまつるべし、とでも思っているのだろうか。
私企業の広報用のサイトだからといって、公共性のある空間でトラックバックスパムや他者への強要が横行するというのは末法だと思う。


僕は、かつて村上さんが朝日新聞社で運営していたサイトには頻繁にアクセスしていたのだけれど、たまにはメールを書き、そしてありがたいことに、返事をもらえたこともあった。
やっとISDNだったくらいのネット社会で、村上さんのサイトに対してのスタンスは、だからこそ慎重なものだったし、誠実なものだったという印象を持っている。

これは得手勝手な推量だけれど、もしこの「村上モトクラシ」が、朝日のサイトのように村上さんご本人のコミットメントがもっと多いものだったら、こういうことはなかったのではないか……と、贔屓の引き倒しのようなことも思ってしまう。


こんなへそ曲がりで天の邪鬼な意見は、ネット上のごく少数意見、マイノリティだろうし、それは村上ファンの中でも同じだろう。


でも、村上さん。「泡盛カクテル」は、こんなふうに思いました。

そもそもこの担当者、マツモト氏に「バトン」を回したのは、新潮社の「Foresight」に「シリコンバレーからの手紙」という連載をしている梅田望夫という人物だそうだ。

検索などなどしてみると、なるほどIT系の人で、電車男にハマっていたことがあって……株式会社はてなの取締役ですか。

かのホリエモンのおかげで、IT系の人がビジネスに無手勝流なのはよくわかったから今さら驚かないけれど、あっちでもこっちでもオールドタイプの胸ぐらをつかんで、自分の土俵に無理矢理たたきつけて踏みにじるようなことをするのが「情報化社会」「ITの未来」だというのなら、ここはやはり一定の距離を置くことしかできないな、と思った。