接吻──甘くも、熱くも無く
友達や、友達の友達──ってカンジの男女何人かで食事に行った場面を想像してください。
その席は楽しく盛り上がり、何人かは次の店に流れて行くわけです。
次はバーに行って飲みなおし。ここでも三々五々人数は減り、最後に、僕ともう一人の女性が残りました。
以前からちょっとした知り合いだったその女性とさらに盛り上がり、とても楽しく飲んでたんですが、さすがに明日もあるから帰ろうか、なんて時間になります。
たまたま同じ道筋だったので、タクシーで帰ることにしました。
車中でも盛り上がってましたよ。二人とももちろん酔ってたけど、お互いにビールしか飲んでなかったし、決して酔いつぶれてたわけじゃありません。
先に僕の家に着き、自分の分のタクシー代を彼女に渡します。
そしたら「多すぎます」って言われたわけです。
それじゃあ、って僕は彼女の頬にキスしようとしたんですね。おつり、ってわけじゃないけど。
もちろん、全然期待なんてしてないし、半分以上冗談です。
そしたら彼女、唇から迎えにきちゃう。
──驚いたし、迷ったけど、ここはおとなしく頬にしておこう、とチョン。
でも、ここでちょっと嬉しくなっちゃったんですね。
せっかく“お迎え”もあったんだし、ってことで唇にもチョン。
おやすみ、って言い交わして別れました。
ところが翌日出したメールには返事が来ません。
その翌々日には直接顔も合わせるチャンスがあったけど、限りなく無視に近い形で遠ざけられてる。
……???
それから、僕の周りで、いろんなところの空気が悪くなっていきました。
どうも彼女、強引な“セクハラ”をされたと言って回っているらしい。
一から十まで無理強いなんてしていない僕としてはビックリです。
そして、僕のコミュニティはちょっと狭くなりました。
これまで、そうした四面楚歌の経験が無かったわけじゃないし、もっとひどいことだってありました。
でも、そんなときだって誰か一人くらいは話を聞いてくれる人もいたわけです。
ところが今回は一切ナシ。
つまり僕は、彼女と共有していたコミュニティでは“そういうポジション”しか作れていなかった、ということなんでしょう。
桑田真澄17歳の言葉を、また思い出してしまうわけです。
「──そう思うなら、そう思ってもらっていいです」
おそらく、彼女は僕の何かが気に入らなかったのでしょう。
だからといって、白いうさぎを黒いと言い張るようなことをされたのは、とても残念でした。
僕は本当に──悲しかったのです。
■オリジナル・ラヴ 2000BEST
「接吻」が収められたベストアルバムのひとつ。
オリジナル・ラブも、いつのまにか入手困難なアルバムがあったりで驚いた。