「零 ゼロ」★☆☆☆☆
ひさしぶりにどうしようもない映画を見た。
どう見たって「アタック・ナンバーハーフ」よりたくさん予算を使っていそうなのに、そもそも映画を作ろうという気持ち自体が無いようにしか見えなかった。
なまじVシネマよりも予算を使っていそうな分、ひどさがスケールアップしている感じがする。
映画会社の試写室なので途中で席をたつのもはばかられたのが、微妙に拷問チックでじつに辛かった。
この映画、好き嫌いをいう以前の問題として「ヒドイ」
これまでいろんな映画を批判してきたけれど、それは、批判するだけの内容がそこにあったからだ、ということがよくわかった。
「ここがダメ」「あそこはこうのはず」みたいな居酒屋トークができるような映画は「それだけ楽しませてくれている」としみじみ納得させられた。
大東亜戦争末期の海軍パイロット。34機撃墜(!)のエース、龍太郎(杉浦太陽)が主人公。
南方を転戦して、九州のどこかの基地に配属されている彼は、「飛行機乗りは飛行機の上では死なない」と、かたくなに特攻を否定していた……といった大ワクで物語は進む。
恋人役が辺見えみりだったりと、それなりに予算も使っていそうなのになぁ。
なにしろこの映画、歴史を題材にしているのに設定や用語の考証がおそろしく適当なのだ。
何も制服がおかしいとか、そんな細かいことを言っているわけじゃなくて、ちょっと図書館で調べただけでもそんなことできないだろう、といったテキトーさのオンパレード。
チラシのコピーの「未来を描け!」にしても、ストーリー中の挿話にしても、小林よしのりあたりを斜め読みして、適当にちりばめただけかもしれない。
──要はこの映画、やる気がないのだ。
特攻隊を題材にして、自虐史観に背中を向け、右寄りセンチメンタリズムで作ったこの映画。
題材と語り口を利用して制作資金を集めたかっただけで、監督も映画会社も何のメッセージも持っていなさそうだ。
監督・脚本(それに編集も!)の井出良英はこういう人らしいけれど、便利な人が便利に使われてポン、とお手軽に作った「映画」ってことなんだろうか。
杉浦太陽はこの映画ではもちろん短髪で登場します。最近は弟(太雄)と組んで音楽活動もしているらしい。
部下たちを順番にボコボコに殴っていくシーンはとても“リアル”で、「あの事件はやっぱり……やってたんだろうなあ」って思わされちゃったとこだけがちょっと面白かったかも。