平次・ザ・ビースト

casa_kyojin2004-01-06


明治座新春公演、北大路欣也の「銭形平次」を見に行く。
同じ時代劇でも、本当はこういう勧善懲悪じゃなくて「鬼平犯科帳」のようなリアル指向が好きなんだけれど、生の舞台はやっぱりうれしい。ニコニコと日本橋浜町まで出かける。


ふつう明治座や新宿コマの時代劇の舞台は、芝居と歌謡ショーの二部構成になっているけれど、北大路欣也は歌手じゃない……ということで3時間近くの上演時間ってことに、ちょっとイヤな予感。
45分になったら銭が飛ぶ時間配分でいっぱいいっぱいのベタな勧善懲悪人情話が、火サスレベルのボリュームになっちゃって大丈夫なんだろうか?


で……いや〜、長かったですよ。上映時間じゃなくて「暗転」が。とにかく何度も何度も暗転。ちょっと袖から引っ込んだと思ったら、また暗転!
どんでん返しもあるし、リモコンでセットを動かしていたりと結構ハイテクな舞台なのに、なぜか真っ暗闇が長い長い。
後から明治座の人に聞いたら「北大路さんの衣装替えが長いんですよ」とのこと。
ん〜、なんとも「オレ様」舞台だってことだったんだなあ、まあ昔からナルシストっぽく見える人ではあったけれど。


そもそも、今回の明治座公演も最初はシェイクスピアをやろうとしてたっていうんだから、相当のオレ様。
そんな演目ではチケットが売れなくなってしまう! ってことで、担当者がどうにかなだめて銭形平次にしてもらった、なんて経緯もあったんだとか。
芝居の内容も、時代劇? という瞬間が結構あった。とにかく大ゲサすぎるセリフ回しは、江戸時代からはみ出しそう。
クライマックスの殺陣シーン。単身敵陣に乗り込んできたオレ様平次が憤怒の形相で言い放つ!
「今夜の平次は、鬼だ! 獣だ! 狼だ!」 
……客席笑ってました。
大団円で唐突にヒロインが狙撃されて死んでしまう力技の愁嘆場には、これまた客席から失笑がもれていたし、フィナーレを「花見の宴会でみんな“にわか”の扮装をしている」という設定にして、「旗本退屈男」風の着流しでムリ目に花道から登場、なんて“演出”の受けもイマイチ。


つまりは、時代劇に期待されるものを盛り込まないで、自分のやりたい芝居を銭形平次のワクに無理矢理押し込めてしまったことで、舞台と客席に温度差ができちゃったんでしょう。
小松政夫の万七親分と、清水紘治の悪同心はさすがに堪能したけれど、オレ様の平次親分は……もういいや。
あ、あと中原果南はやっぱり「はるちゃん」みたいな元気な演技で楽しかったです。


写真は、神田明神境内の銭形平次の碑。社殿の右側にあります。