ゴジラ FINAL WARS ★☆☆☆☆

casa_kyojin2004-12-28


★ひとつは、平成VSシリーズの“小難しいだけでカタルシス無し”の格闘シーンを、木っ端微塵に粉砕するかのような、怒濤の対決シーンに。



「あずみ」の北村龍平が監督ということで、今度はゴジラが間延びしたゆる〜い殺陣を披露するのかと覚悟していたら、いきなり! それも延々と「リポビタンD」のコマーシャルをやられたのでひっくりかえった。

この「ファイト一発」が、なんとも長過ぎる。

結局、時代劇だからだら〜んとした殺陣をやって、ゴジラだから超速バトルをやったということ?

北村という人、ひどく天の邪鬼なのかもしれない。


でも、ミュータントがナチス親衛隊風の制服で、ご丁寧に真っ赤な腕章をつけてるのはやり過ぎ。ドイツ公開の予定は無いらしい。

それなのに、上官はドイツ国防軍風。
ヒエラルヒーしっちゃかめっちゃかというか、衣装デザイナーはセンスも配慮も無さ過ぎ。


え? キングシーサーが沖縄大破壊って……ナチもそうだけど、多分制作者一同頭が悪いか、気働きがなんてことには関心なさそう。


そのわりには、NYに出現したラドンはノンキャラのビルしか破壊せず、アメリカへの配慮はたっぷり(ちなみに上海はテレビ塔、オーストラリアはオペラハウスと、ランドマークがそれぞれ破壊されている)

あ、自由の女神は倒れていたけど、彼女に関してはこれまでも再三やられちゃってるもんね。

この映画の数少ない功績? のひとつは、ハリウッド版ゴジラに「ジラ」という名前を与えたことだけれど、ジラを「ゴジラじゃない」とやったことはともかく、マグロがどうのこうの……というのはオフザケが過ぎるか。


そして、平成ゴジラをダメダメにしたA級戦犯の一人、三村渉の脚本は相変わらず絶好調(共同脚本。もう一人は桐山勲

X星人の正体あばきの犬エピソードのモタモタ、「カイザー」の存在と設定やそこまでの長〜い道筋、北村X星人がトップに立つ唐突さ等々、小理屈を振り回すくせには細部の詰めはやっつけ仕事。

だって、ミニラの突然の巨大化なんて、どう説明付けるの?


となると、そんな体たらくの脚本を、あそこまで演出できた北村龍平は、やはりそれだけの力量があるのだろう。

そういった力技や、そうした芸風を好きな人がいることはわかる。

あとは、もう一人の脚本家の桐山が、原作つきの「スカイハイ」や「あずみ」をあんなふうに仕立てたような“頑張り”をした部分もあったんだろうか。

ともあれ、北村を筆頭に、ゴジラという当方の金看板に対するリスペクトは感じにくい。
もっとも、ゴジラが「シェー」をして見せたり、放射能火炎で空を飛んだりしていた作品にも、そうしたリスペクトは存在していなかったのかもしれないけれど。



さて、東宝スターシステムは、ヒロインたち(?)のキャスティングに影を落としてしまったようだ。
脚線美担当が、オヤジ受けしかしない菊川怜と、うさん臭いところに嫁に行ったばかりの水野真紀では……それこそオヤジしか喜ばないだろう。

でも、平日の夕方、新宿の映画館には50代前後のスーツ姿のオジサンたちばかりだったので、マーケティングとしては正しかったのかもしれない(ちなみに、公開第一週だったのに20人くらいしかいなかった)

菊川、ニューヨークでのプレミアには振袖で登場していたけれど、劇中の赤エナメルで行けばよかったのに。
でも……五反田で女王様のアルバイトしてる女子大生みたいだったけど。



そうしたディテールにツッコみながら見る分には、たしかに楽しめる作品かもしれない。

でも、エヴァンゲリオン使徒風に登場するガイガンや、地下ドックの最後の希望ヤマト! ……じゃなくて豪天号ってあたりは同じメイド・イン・ジャパンだから我慢するとして、ハリウッド映画のアレとかコレとかを、あっけらかんとパクリすぎ。

パクったこと自体よりも、その「あっけらかん」とした潔さが気になってしまう。

あっけらかんと作った「期待される日本製キャラクター映画」を対外輸出するのは、それがマーケティング的に正しいからだろうにしても、国内でもそれが通用するのだとしたら、なんとも居心地が悪い。


また、本多猪四郎円谷英二の信者たちに対するアンチテーゼとして、この映画を評価し、守旧派を否定したがる層もいるけれど、なんのための論争なのか、全くわからない。

いつまでたっても半世紀前を持ち出して、「猪四郎なら……」「円谷は……」といった見方、言い方しかしないのは、単なるアナクロニズムだ。
しかし、ゴジラの本質が本編や特技の監督にあるというのなら、本多・円谷抜きのゴジラを全否定して、本多映画や円谷映画だけを見ていればいい。

しかしこの作品に関しては、怪獣プロレスのK-1バトルへの進化くらいしか見所が見つからない。
これをして「ゴジラ」だというのも、力技が過ぎるだろう。

ゴジラだと思わなければ楽しめる」といった論調も見るけれど、それが「シリーズ最終作」だというのなら、やはり困ってしまう。

もっとも、「これが最後」っていうのは、月影先生の「私の命は残りわずか」や、森繁の「私はもうすぐ死ぬ」みたいなものか。

結局、だれも「FINAL」だと思っていないのかもね。



あ、ヘドラの出番が少なくて残念。

あと、元ネタには「妖星ゴラス」も登場していたけれど、気づいた人は流石に少なそう(あと「100発100中」も)

ともあれ、ラストで伝統の“立ち泳ぎ”が見られたのは懐かしかった。


■ゴジラ FINAL WARS(スペシャル・エディション)
日本での劇場公開時のポスターと同じ図柄(文頭のもの)の通常版は、入手しにくくなっている模様(2011/10記)