「プラダを着た悪魔」★3/5
「プラダを着た悪魔」って邦題は、原題 の"The Devil Wears Prada" とはニュアンスがちょっとちがうのでは? ……とも思うんだけど、どうなんだろう?
さて、面白かったかというと、イエス。
いい映画だったか、というと……微妙。
DVD買うか? となると、ノー。
たしかに、シンプルな女のコのサクセスストーリーと思えば楽しめる映画だった。
ところが、大事になってくるはずのファッションマスコミ界の描写が、どうにもヌルい。
出版放送業界の描写で、内輪ネタがバシバシ登場してきた上に、それが十二分に一般の人からもウケをとっていた「ブリジット・ジョーンズの日記」よりは数段落ちるし、内容的にスッカスカだった「10日間で男をフル方法」も、出版広告業界の描写ではイイ感じのところがあったことを考えると、この映画のツメの甘さはどうしても気になってしまう。
何が一番困ったって、編集長がちっとも悪魔には見えなかったことだ。
たしかに無茶な注文が多い。でも、どうにも「そんなもんじゃん」と思わせられちゃう。
たしかにコーヒーだのクリーニング屋だの……ってあたりはキョーレツなんだけれど、アシスタント業務としては“無くはないだろう”といったレベル。
それに、ちょっとしたヤマになってる「ハリー・ポッター」のエピソードにしても、ただの無理強いじゃなくて、編集者的にはちゃんと解答方法を導きだせるクイズみたいなもの、ってことが透けて見えるんだもの。
とまあ、この映画に関しては「同業者であること」が、ストーリーを楽しむことを邪魔してくれました、それはもう徹底的に。
ともあれ、登場する女性たちのファッションがものすんごくキレイです。それだけで楽しい映画になってる部分はたしかにあります。
どのくらいキレイって、ヒロインを演じたアン・ハサウェイその人が何かのレセプションで着てるドレス(画像)が田舎高校生のプロムにしか見えないくらいなんだもの(それにしてもちょっとヒドイよね)
あと、気になった……というか鼻についたのは、アメリカ的階級社会に対するリベラルなスタンス、としての“演出”だった。
ロースクールを蹴って新聞社への就職を目指しているようなポリシーと上昇志向のある女性が、ああいったボーイフレンドを選ぶという図式は、いささか“政治的”に正しすぎる。
同じコックさんが、ヒロイン(バレリーナ)のボーイフレンドとして登場する「バレエ・カンパニー」に比べると、その設定や描写は上っ面だけの薄っぺらいものに見えた。
僕の生業がこの映画を軽いノリでは楽しませてくれなかったことは、よって件のごとし。その上、父がコックさんだったことにまで足を引っ張られちゃうとは……まあ相性が悪い映画っていうのもタマにはあるということなんだろう。
地上波でオンエアされたら見ちゃうかな、ってことで★3つくらいはつけときます。