映画「いちばんきれいな水」★★☆☆☆

casa_kyojin2006-12-14


とてもきれいな映像。
とてもかわいらしい加藤ローサ菅野莉央

──でも、それだけ。

「映像」の美しさ、心地よさだけでは、「映画」にはなれません。


公式サイトに曰く、ウスイヒロシ監督は「少女の繊細な胸の内を透明感のある画面に鮮やかに描き出した」のだそうだけれど、「透明」すぎて向う側がスケスケのスカスカ。

透明感と、中身の無さを一緒にされては困ります。

例えば、料理が見た目の美しさだけで成立するものなら、ワックスサンプルでいいわけです。
でも、そんなものは煮ても焼いても食えません。
それに、食材が本物だったとしても、撮影現場では絵面の美しさのためにツヤ出しワックスをガンガン吹きつけちゃったりもする。

見てくれだけでいいのなら、そんなふうになんでもできるわけです。



監督がPVやCMを撮っていた人ということで、イヤな予感はありました。
オープニングからいきなりCM調の演出で始まる「下妻物語」の中島哲也もそうでしたが、とにかくテレビ的で軽薄。アニメが無意味に挿入されるところまで一緒。

ヒロインの加藤ローサにしても、かわいいだけ。
芝居といえばニコニコしてるだけとあって、この映画、そうとうに薄っぺらい。

寓話や伝奇物語のようにクールでシニカルな物語構造が、無理矢理ハートウォーミングに換骨奪胎されているのが心底モッタイナイ。
それに、ボーイ・ミーツ・ガール的エピソードの蛇足も、プロダクト的な迷走に見えました(それこそ、菅野莉央はかわいいけれど)


ヒロインたちの叔母役のカヒミ・カリィ、彼女の演技じゃない演技の存在感に敬意を表して★3──といきたかったんだけど、記者会見に登場した菅野莉央がバレエの発表会みたいなものすんごいメイクで登場したことにゲッソリしたので-1、結果★2です。



さて、トークイベントにはウスイヒロシ(写真中央)と一緒に原作者と脚本家も登場。
漫画家の古屋兎丸(同右)の出世作「π」は、ともすれば鬼畜系にすらなってしまいそうなフェティッシュな作品。
いったいどんな人かと思いきや、なんだか漫画家らしからぬ雰囲気の人でした。
多摩美術大学を卒業した元美術教師という経歴にも納得(あと「π」の作中に登場した女の子の「パイ」のデッサンが、妙に正確だったのははそういうことか、と)

脚本の三浦有為子(同左)は、なぜかこのトークショーの司会もやらされてたんだけど……えーっと服がヘンでした。パッツンパッツンの上に妙にシワくちゃ。


わが身を振り返って、人の前に出るときはキチンとしなきゃなあ、と思いました、マル。


■いちばんきれいな水