【抗議の手紙】

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※以下の引用には、プライバシー該当部分などの一部に改編があります。

拝啓 秋涼の候、貴社ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

突然お手紙を差し上げまして、失礼いたします。
ご多忙の折、このような形でお時間を頂戴するのは、私といたしましても不本意なのですが、昨日御社におきまして、いささか納得しかねる対応を被った件について、無念止み難く、一筆申し上げる次第です。


先週、アメリカから来日していた友人を迎えていた私は、昨日も商談を終えた彼と東京駅で待ち合わせていました。
朝から忙しく、ATMに寄る時間が無かったという彼を、まずは銀行などに連れていく必要がありました。今日、日曜の朝早くにホテルを出なければいけない彼は、日本円の現金を手元に必要としていたからです。
日本の日曜日は、クレジットカードと米ドルしか持っていないアメリカ人にはあまりに不便なことはもちろんです。

しかし私は、TOKIAの一階に東京三菱UFJのATMがあるのを覚えていましたから、まさに地下のレストランに行く前に寄られるな、と気楽に考えておりました。
ところが、彼のカードは使えませんでした。
理由については、同様の状況を経験をしたことの無い私にはわかりません。

さてその直後、彼は御社のオフィスがTOKIAに入居していることに気づきました。
「僕の口座はJPモルガンなんだけど、ATMはないの?」
「ここはオフィスだけだと思う」
と、私は答えましたが、念のため確認しようと思い、御社の受付のカウンターの方に尋ねました。
そこからのやりとりは、非常に残念で、砂を噛むような言葉の繰り返しになります。
そのとき、二人の男性スタッフが見受けられましたが、私が主にやりとりをしたのは、ゲートの向こうに立っていた方でした。

「ATMは設置してありますか?」
「ありません」
「彼の口座はアメリカのJPモルガンのものなんですが、どこかで出金することはできませんか?」
「できません」
「ここにATMが無いことはわかりました。どこか他のところに、JPモルガンのカードで出金ができる場所や方法はありませんか?」
「そういうことはわかりません」
「それでは“そういうこと”は何時、何処で尋ねたらいいのですか?」
「平日にこの受付にいる人に聞いてください」
「今の時間に電話でこういったことをサポートしている窓口はありませんか?」
「わかりません」

といった調子で、およそ会話として成り立つことは最後までありませんでした。

たとえばそのサポートダイヤルの番号が、アメリカでもどこでも、国際電話をかける必要があったとしても、私たちはそこに電話をしたでしょう。
あるいは、東京支店のしかるべき窓口の電話は、週明けの月曜日以降にしか通じなかったとしても、そうしたインフォメーションの存在だけで、私たちは幾ばくかの納得をすることもできたでしょう。

しかし、このような「ありません」「できません」の繰り返しだけでは、私たちはただただ虚しさと、不快感を得ることしかできませんでした。

御社のアメリカの本社と東京支店の間で、業務やその運営にどのような差異があるのか、私にはわかりません。
しかし、はるばるアメリカからやってきた、現金の持ち合わせに不安を感じている顧客に対して、こうした木で鼻を括ったようなやりとりしか提供できないのであれば、そこにはいかなる種類の理を見いだすことも難しいでしょう。
彼は既に、日本のATM総体の稼働時間の短さに憤慨していたところでしたが、こうして自分のメインバンクの出先にも、失望を感じさせられてしまうことになったわけです。


私は、スタッフの方が何を言っても「わからない」を繰り返すばかりで、あまりにも自社業務に無関心なので「あなたはJPモルガンの方ではないのですか?」と尋ねました。
彼の返答は「違います」「セキュリティの者です」といったものでした。
左様であれば、胸にJPモルガンの銘が打たれたプレートを身につけているのは、いささか不適当が過ぎるように思います。
例えば、一部のJRの駅のホームで見られる警備員は、明らかに駅員ではないとわかる別の制服を着ています。

とはいえ、そうした警備員に乗り換えなどの鉄道業務について質問をしたとして、暖簾に腕押しで「わかりません」といったの答えしか帰ってこないとは思えません。
せめて“駅員に聞いてください”くらいの答えが返ってくるのではないかと思いますし、期待したいのが人情ではないでしょうか。
もし、駅のホームの、あるいはデパートのフロアの警備員が、「わかりません」「できません」といった返答をするのがあたりまえだとして、その責任の所在が無知な利用客の方にこそあるとは、とても思えません。


また私は、そのセキュリティの方に「それではシティバンクのATMはこの辺にありますか」とも尋ねました。
私が彼らの「わかりません」という繰り口上を受容できるとしたら、それが唯一の質問だったでしょう。
そこでの答えは「ありません」というものでした。

ところがその後、私たちはシティバンクのサポートダイヤルと、同社のWebサイトで大手町支店の存在とその場所を知り、そこで無事に目的を達することができました。

玄関口に立つセキュリティの方は、すべからく丸の内界隈の地理に精通しているべし、とは全く思っていません。
しかし、後になってから容易にそれとわかる嘘をつかれたとなると、それはまた別の話です。

確かに、他社のATMについて質問したことは不躾だったかもしれません。
しかし、彼は御社の顧客であり、御社の口座から出金ができない、問い合わせ先も無い、ということが“判明”している状態で、プランBとしてそういった質問が出たとして、それはあからさまな嘘をつかれなければいけないような問題なのでしょうか。


ところで彼は、一部の銀行が「ゴミ」と呼ぶ小口の個人客ではありません。
あるいは私が彼だったら、帰国後に代表権を持つ社長として、自社の口座を別の銀行に移すことを考えたかもしれません。
しかし、彼は紳士でしたから、ただただ私に不愉快なやり取りをさせるたことを詫びるのみで、決して御社や御社スタッフのことを悪し様に言うことはありませんでした。
かといって、彼が御社の日本支社や、あるいはその総体について、いかなる種類の悪印象も持っていないことの証左にならないのはもちろんです。

一方私は、セキュリティの方の対応が、御社の企業精神や企業風土を体現したものではないことを信じたいところではありますが、様々なネガティブな感情が湧き上がることを押し止めることができません。

例えばこれからTOKIAに足を運んだり、そこで食事を楽しむたびに、この不愉快な出来事を思い出さずにはいられないでしょう。
また将来、アメリカで生活をすることになったとしても、決して御社に口座を持つことは無いでしょう。

残念、ただただ残念です。


ともあれ、お願いが一つだけあります。

今回のように、アメリカからやってきた御社の顧客が、慣れない日本で困っていた時、今後は決してこのような残念な思いをさせることだけはないようにしていただけるでしょうか。

今回お願いしたいのは、ただただこの一点に尽きます。


さて、あまりに長くなってしまいました。末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈りいたします。                                      敬具



JPモルガン・チェース銀行
東京支店長 岡村宏太郎 様


 2007年10月21日

  恭仁亭 拝