「 ブリジット・ジョーンズの日記」★5/5
ブリジット(レニー・ゼルウィガー)の潔さに拍手! マーク(コリン・ファース)の愚直さに苦笑。
そしてダニエル(ヒュー・グラント)の情けなさは、空き缶にコイン入れてやろうか……なんてくらいに哀れ。
公開当時、話題の中心になったのは、映画の内容云々よりも、ブリジットというなんとも愛らしく、ユニークな女性の存在そのものだったと思う。
映画そのものもとても良くできているのだけれど、ブリジットというキャラクターの存在感やリアリティがあまりに強烈だったので、そちらに話題と論議が集中したのもしかたがなかったかもしれない。
とどのつまり、カッコいい(はず)の男の正体はスカスカのダサダサで、愚鈍にも魯鈍にもしか見えない男がじつは王子様だった、と。
物語は実に「青い鳥」的なお約束の大団円になっちゃうわけだけれど、そこに至る過程のハチャメチャ具合が、あまりにも笑えるので楽しい映画に仕上がっている、ということだろう。
それから、ダニエルと一応は同業者の僕から見ても、ブリジットの職場となる出版業界や放送業界の描写にそれほどの破綻がなく、何とも巧妙に「それっぽく」作り上げているのがなんともウマい。
この「業界」描写がじつにうまくまとまっていることが、この映画のクオリティをヒョイと持ち上げている。
リアルじゃないですよ、もちろん。
だけどそこには納得できるリアリティがちゃんとあって、ストーリーとして上手く機能させているのが素晴らしい。
この「リアリティ」に限って言えば、「いかにも」なロマンチック・コメディの「10日間で男を上手にフル方法」は、そのへんで映画そのものの品質とプレゼンスをググッと持ち上げているわけです(本来のポテンシャル以上に? ……というのはまた別の話)
そして、「プラダを着た悪魔」や、ドラマの「働きマン」は同じフェイズでガツンと下がる。
あまりにもインチキな業界描写が、ストーリーや内容の本質にまでネガティブな影響を及ばせてしまうのであれば本末転倒だ。
もっとも、それを超えたところで何かを見せてくれた「プラダ─」と、そこでおしまいになりそうになっている「働きマン」では、作品のありようとして全く正反対ではあるけれど。
映画が気に入った人はぜひ原作も一読されることをおススメします。
ブリジッド母はもっとどうしようもないし、マークはもうちょっとプラクティカルにカッコいいのがマル(ダニエルは……相変わらずだけど)
そして! 実は原作にもヒュー・グラントは登場します。ぜひ探してみてください。
そういえば、あとから気づいたのだけれど、コリン・ファースって、「アナザー・カントリー」のあの男の子だったのか!
あのパブリックスクールを卒業してから大学でダニエルに出会った……とか思うと、なんとも奇妙なおかしさを感じちゃうけど。