「サハラに舞う羽根」★2/5
911翌年の米英合作ということで、史実を媒介したイスラムフォビアなマチズモが見えかくれ。
ヴィクトリア朝ならではの衣装や古城といったディテールは目を引くが、監督コメントにあるような「戦争反対」というメッセージが、はたして本作に存在するかどうかは疑問。
ラスト、戦没者追悼ミサで演説するのは英雄として戦い、そして盲目の傷痍軍人となったジャック(ウェス・ベントリー)
「例え我々の帝国の栄光が翳る日がきたとしても、今のこの貴い日々は残ります(拙訳)」
当時の軍人であれば、どんな負け戦に際してもそういうふうに言ったかもしれない。しかし、対イスラム戦争がこういう状況になっている現代に作られた作品で、クライマックスに朗々と歌い上げる類いのセリフとしては違和感を感じた。
多分、私が白人ではないからだろう。
この演説。あたかも『プライベート・ライアン』のラストで大仰にはためく星条旗のようだった。
そんな国威発揚パフォーマンスなのだから、イギリス人やアメリカ人のようには、アジア人の私は受け取れないし、またそうするべきではないはずだ。
監督のシェカール・カプールは英領インドで生まれ、ボリウッドで映画人として仕事をしていた人だそうだが、前作の『エリザベス』同様、イギリス帝国主義に対する視線は客観的というよりは肯定的にさえ見える。
佐和山攻め一番手になった小早川秀秋。
満州国陸軍中尉高木正雄だったパク・チョンヒ。
逆の位相に置かれた人が、そこであえて留まろうとするとき。人は過剰に振る舞ってしまうものなのかもしれない。
ところでこの作品、劇場公開版の字幕は戸田奈津子。
問題が多い戸田節、なっち語はさておき、軍隊用語にメチャクチャな訳が頻出するのには閉口した。
敵の騎馬部隊が目の前に肉迫するまさにそのとき、指揮官の命令が「剣を銃の先につけろ!」「銃を担いで肩につけろ!」。そんなにダラダラしていたら、事を起こす前に踏みつぶされて終わりだろう。
これはメディア試写の? 軍事用語くらい資料にあたらにゃ。