事業仕分け“批判”の勘違い

casa_kyojin2009-12-16


「二位じゃ駄目なんでしょうか?」

蓮舫参院議員のこの発言は、“白痴的”かどうかはともかく、たしかにピントがズレている。
スーパーコンピューターの開発は、最終的には国家安全保障にも関わるラジカルな問題だからだ。

そして──この発言は、事業仕分け批判のためのスケープゴートとして、象徴的な存在となった。

“反仕分け派”は、あたかも民主党政権が、国家戦略としての科学技術、あるいは芸術やスポーツを蔑ろにしているかのように言い立てる。

オリンピックのメダリストや、ノーベル賞科学者を集めて華やかな会見をセッティング。
北京五輪・フェンシング銀メダルの太田雄貴に、

「これからの子供たちにも(合宿や遠征費の)自己負担金が増えるのは悲しすぎる」

──と明け透けなアピールをさせるのだ。


しかし──ここに大きな論理のすり替え、マジシャンズセレクトがある。
そうした文教予算は“白痴的”な理屈で削られたわけではない。

仕分けでバッサリやられた事業と、その窓口になっている財団法人などの大半は、

天下りは何人ですか?」

「人件費はどうなってますか?」

といった“必殺仕分け人”の一撃で瓦解したに過ぎないからだ。


例えば、日本スポーツ振興センターは、国立競技場の運営、スポーツ振興くじtoto)の実施などを行っている独立行政法人だが、管理しているナショナルトレーニングセンター(東京など)を、財団法人日本オリンピック委員会JOC)に貸与している。

そのトレセンの使用料が昨年度は5億円だったものが、今年から半額に減額。その分、税金の投入が増えることになったという。

一方、トレセンネーミングライツは年間8,000万円で「味の素」に売却されているが、その半額は店子のJOCに入っているのだから、わけがわからない(衆院議員・河野太郎Webサイト「河野チームのヒアリング」

そもそも、JOCの事業収入32億弱の、じつに86%が国費でまかなわれており、totoの利益もJOCの収入だ。
これでは、税金があたかもマネーロンダリングでもされているかのようだ。


また、音楽や舞台芸術といった分野にも大ナタが振るわれた。

補助の大きな窓口となっている独立行政法人日本芸術文化振興会への文化庁交付金も、圧倒的な削減、縮減の対象となっている。

例えば、仕分けでは「(振興会からの交付金が)収入のほぼすべてを占めている財団法人に、事業を委託する必要性がまったく感じられない」という指摘があった。

現に、財団法人新国立劇場運営財団は7億円の収入のうち5億円近くが振興会からの交付金で、理事長を筆頭に、天下り役員たちには1,600万円近い報酬が支払われている(前同)

これでは、振興会=新国の構造そのものが“天下りエイド”であり、その“非効率性”がバッサリやられるのは当然だ。

振興会に“天下り役人互助組織”という側面がある限り、個々の補助の是非以前の問題として、その存在は構造的な問題となっている。


また振興会は、国立劇場国立演芸場国立能楽堂といった施設も運営しているが、例えば能楽堂の建設当時には、能楽界の内部からも“不要不急の施設”という意見があった。

これには、振興会の“箱モノ行政”的な予算獲得、運用に対する批判が多分に含まれる。


今回の仕分けで否定されているのは、そうした“非効率的”な運営であり、“利権”としての人事予算のはずだ。

それをあたかも、仕分け手続き自体が日本の文化芸術を否定、排除しようとしているかのように言い立てれば、天下り役人と、それを利する佞臣を利するだけだろう。


また文化庁の実施事業に対しても、例えば「新進芸術家の海外研修で毎年150人以上派遣採択は多すぎる」という指摘があった。

実際、多すぎるどころか内情は滅茶苦茶だ。

例えば、バッシングにより人気を失墜させ、オールヌードの写真集まで出した後の裕木奈江が、演劇の研修のためにギリシャに派遣されている。

また、ウォーターフロントの高層マンションに住み、アルファロメオを乗り回し、メジャーレーベルデビューから10年も経ったアラフォーのジャズミュージシャンが派遣されたのはアメリカだ(そして現在、自身のWebサイトでは派遣の事実に触れていない)

そうしたキャリアや年令が“新進芸術家”にあたるかどうかは、“必殺仕分け人”の手をわずらわせることもないだろう。


──しかし、例えば一部の舞台芸術ファンは、助成廃止反対を訴える署名をEメールで大量に送信することで「文化庁DoS攻撃を!」と呼びかけたりする始末なのだから、あきれてしまう。

日本の、文化や芸術、教育をスポイルしようとしているの悪玉は、仕分けなのか、それとも天下り役人たちなのか?

この実にシンプルな命題を、“反仕分け派”の人たちには一旦立ち止まって考えてもらいたいものだ。

批判されるべきは、“仕分け”ではない。

■蓮舫参院議員 ノーベル賞学者五輪メダリストに大反論
日刊ゲンダイ - 12月06日)

事業仕分け」が今年の流行語に選ばれる一方で、「仕分け」された側からの批判、恨み節も後を絶たない。ノーベル賞受賞者らが集結して、仕分けにかみ付いたのに続き、五輪選手も記者会見して、選手強化事業などが仕分けされたことを批判した。さて、仕分け人はこうした声にどう答えるか。仕分け人といえば、この人、蓮舫参院議員の大反論──。


■裕木奈江写真集「UNRELEASED FILMS NAE YUKI」

ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」などに端を発したバッシング騒動が1993年。
このヌード写真集が1999年。
ギリシャ派遣は2004年。

この写真集、さすがに新品では手に入らない模様。
当時3,600円が、2,000円以下が相場のようだけれど、中には10,000円なんて強気の値付けも。