No Satisfaction! ─フィギュア五輪代表の"選考基準"

casa_kyojin2009-12-30


混戦だった女子フィギュアスケートバンクーバー五輪代表争いが、安藤美姫浅田真央鈴木明子の三人で決着した。

一方、男子は予想、期待された通りの結果となった。
全日本選手権の表彰台の通り、高橋─織田─小塚、じつにシンプルだ(織田はGPファイナル2位でイチヌケしていた)


今回の代表選考基準は──

1. GPファイナル表彰台の最上位

2. 全日本優勝

3. 残るワクは──

 a. 全日本3位以内
 b. GPファイナル進出者
 c. 全日本終了時点でのワールドランキング日本人上位3名

──というものだった


日本スケート連盟なり、JOCが描いていた絵は、例えばこうだったかもしれない。

──GPファイナルと全日本で真央ちゃんとミキティが優勝。あと1ワクは基準通り。


なにしろ、浅田と安藤は代表になってもらわなくては“困る”のだ(理由は後述)

しかし──浅田がまさかの不調でGPファイナル進出ならず。さあ、困った。


GPファイナル2位でイチ抜けの安藤を除くと、条件3-b、c条件で鈴木、3-cでの浅田。

そして実は、基準には“過去に世界選手権6位以内”という“但し書き”があるので、中野友加里村主章枝も加わる。


──つまり、有力4選手には誰でも可能性があったのだ。



全日本の結果に胸をなでおろしたのは、当の選考関係者だろう。

安藤、全日本で優勝の浅田と、2位の鈴木──じつに“収まりが良い”。



──しかし、もし浅田が、先のGPロシア杯のように5位だったとしたら?


最悪の結果をシミュレートしてみよう。


優勝は既に内定済の安藤。
2位と3位は、鈴木と中野。
4位にはジュニアで五輪出場資格の無い村上佳菜子
浅田は5位、村主は7位と沈んだ。


──さあ、どうする?


この場合、選考基準に達しているのは、条件の──

3-a、b、cの全てを満たす鈴木

3-aと但し書きで中野。

3-cの浅田。

──の三人だ。


さすがにクリア項目が最多の鈴木は外しにくい。

そして、もう一人は、5位の浅田だ。

「今期と今大会の成績では中野が上回るが、浅田は世界選手権で二度表彰台に上がっている。中野は4位が最高。これまでの実績で決定した」──とでも説明されるだろう。



なにしろ日本スケート連盟は、2005年のトリノ五輪で全日本6位の安藤を、当時の基準「選考ポイント」を理由に代表に選んだ“前科”がある(そして安藤は15位というありえない成績で轟沈した)


もちろん、それもこれも“理由”があってのことだ。

浅田は、JOCシンボルアスリートとしてコカ・コーラやロッテといったオフィシャルパートナー企業とCM契約している。

パートナーからJOCに入る協賛金は、一社あたり4年間で3億円に上る。

安藤もまた、パートナーのトヨタに所属し、浅田同様のコカ・コーラやロッテ、さらにパナソニック丸大食品といったパートナーとCM契約をしている。

ウォームアップの時に、安藤だけがユニフォームではないTOYOTAロゴのジャケットを着ている“厚遇”も、つまり、そういうことだろう。


5社から4年15億円の協賛金を持たらすファクターとしての浅田、安藤のバンクーバー五輪出場は、JOC、パートナー、そしてシンボルアスリートのCM契約を一手に握る電通にとって、絶対条件なのだ。


実際、トリノ五輪選考当時、全日本の結果で中野の選考ポイントが安藤を上回らないよう、中野の得点が低められた、という疑惑が報道で指摘、検証されている。

また伊紙は「浅田は(年齢だけではなく)JOCについたスポンサーの問題で選ばれなかった」とも報じた。


そして今回も、金姸兒キム・ヨナ)バイアス有りの中央日報の記事とはいえ、

「国際基準で見ると、浅田の技術点は15点ほど高い。芸術点はそれ以上。

浅田のSPの芸術点は32.28点。中野や鈴木より技術点が低かった浅田は、審判の裁量で点数が与えられる芸術点を飛び切り高く受け、1位になった」(日本の専門家)

というものが出た。



──代表選考が、また後味の悪いものになってしまった。


こうした事態を避けるためにはどうしたらいいのか。

単純なことだ。五輪代表は全日本選手権での一発選考にすればいい。

そうすれば、代表に内定していた安藤が、今回のように三味線を弾くことも無かっただろうし、四つ巴の争いは実に激しいものになっただろう。


実際、五輪の無い年には、世界選手権派遣の選考基準を、全日本の一発選考としている年もある。

しかし、今年は“協議の結果”──

来年1月の四大陸選手権に浅田、鈴木、中野。

2月の五輪に浅田、安藤、鈴木。

3月の世界選手権に浅田、安藤、中野。

──と、じつに日本的な“振り分け”が行われた。


二枚看板&金ヅルの浅田&安藤を全てに配置することはできないが、エースの浅田は毎月登板だ。

五輪で残念賞だった中野を世界選手権に派遣し、その代わり鈴木は出さない。
“格落ち”の四大陸ではその二人を出し、安藤を休ませる。

──配慮にあふれているようでいて、こんな八方美人もないだろう。



五輪の度に“政治判断”をくり返し、禍根を遺すようなやり方は、そろそろ止めるべきではないだろうか──代表枠を3つも持つ“黄金時代”を終わらせないためにも。


■「浅田真央、18歳」

浅田真央の出演している日本生命のCMを見る度に思う。
ジュニアのころの“真央ちゃん”は、ほんとうにキラキラとした笑顔がかわいらしかった。

今はもう、彼女があんなふうに笑うことは無い。

大人になった──ということかもしれない。
でも、日本選手から笑顔を奪ってしまう要素の一つとして、そうしたカネに絡んだ政治的問題があるのでは? という疑問を消すことは、どうしてもできない。