ル クール ピュー(荻窪)★☆☆☆☆

casa_kyojin2009-12-29


銀座マキシム・ド・パリ、ロオジェ、ウェスティンホテルホテル日航東京……といった経歴を持つ鈴木芳男の店だけに、商品のラインナップやスタイル、その味は実に古典的で正しいフレンチスタイル。

しかし、ひと昔もふた昔も前ならホテルでなければ食べられなかったような、フレンチ的にオーソドックスな手法と、美麗な外観を持つケーキは、この世界に多くのイノベーションや、嗜好の変化が訪れた今、決して第一線を走っているスタイルではない。

また、正しくコストがかけられた結果としての適正な商品価格は、ロケーションが荻窪であることを考えたとき、コストパフォーマンスがよいとはいえない。

売り物になっている野菜を用いたケーキだが、たしかにユニークにしても、単純に考えてみて欲しい。
──甘いものを、わざわざほうれん草の葉で包む必然性はどこにあるのだろうか。


ともあれ、ケーキの外観が秀麗なことに間違いはない。
美しく、小さく、そして高い──「アンリ・シャルパンティエ」のケーキがお好みな人には、充分許容出来る範囲かもしれない。

古典的フレンチの王道を行っているスタイルがあるのもまた確かだ。
しかし、「イデミ・スギノ」のような、いわばヌーヴェルヴァーグ的なイノベーションは無い。


さて、ランチなどにも人気のカフェのスペースは狭く、テーブルも小さい。
テイクアウトのお客さんも多く、フロア全体が賑やかでただでさえ落ち着かないので、席についてのイートインはお勧めできない。

また、スタッフは場慣れしておらず、気が回らない。
年齢層が高めの人も多いせいかもしれないが、ファミレスのパートさんたちのことを思うと、店側にオペレーションに対する基本姿勢というか、気遣いそのものの用意が無いのだろう。

同じような業態として、調布の「「スリジェ」を思い出した。
あちらは、応分のスペースのある店内で、折り目正しい若いスタッフが、サービス面でもキッチリとした仕事をしていたものだ。
店の姿勢というものは、そうした接客だけではなく、商品そのものにももちろん、反映されるものだと思う。


荻窪界隈では定番の人気店ということになっているが、大いに疑問だ。
あえて言うなら、ここを評価することが一種の儀礼としての“社会通貨”になっているような気もする。

それこそ、ヨックモックのようなものだ。
訪問先には、とりあえずシガールやドゥーブルでも持っていけば良い。
今さらその味に期待をしている人もいないが、じつに無難で、筋は通る。

同じように、荻窪界隈では「クール ピューって美味しいよね」と言っておけば、井戸端会議的なよもやま話でも“無難で、筋は通る”


ともあれ個人的には、最寄り駅が荻窪ではなくなった今、わざわざ足を運ぶことは決して無いだろう。
荻窪界隈、本当にケーキの不毛地帯だと思う。[★1]


■鈴木芳男「野菜が主役のフランス菓子」

ムッシュのケーキは、こんなふうに野菜がタップリ。


伊藤理佐の「おいピータン!!」の初期にも、店の包材のデザインもそのままに登場するこの店(巻数は失念)

でも、あれだけ美味しいものにコダワリのある大森さん(主人公)だけに、作中に「徳来」として登場する「中華徳大」と同様、“名前だけ”がモデルなのでは……といったところ。 

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