“汚染米の産地偽装”というカラ騒ぎ 1

casa_kyojin2011-09-20


福島県のコメ業者が、他県産の表示や、JAの検印が入った米袋を大量に集めているという──



■週刊プレイボーイ:“被曝米”の産地を隠すロンダリングが行なわれている?

「今、福島県内のある業者のもとに、『新潟県産』や『栃木県産』など他県の名が表示された2010年産米の30キログラム用空き袋が続々と集まってきています。精米(白米)にする前の玄米が入っていたもので、すべてJAが検査したことを示す検印入り。もちろん、今年収穫される福島県産玄米を詰めて、被曝リスクのない安全な他県産米として売りさばくためです」

言うまでもなく、こうした偽装例はごく一部の極端な例。しかし悪徳業者にとって、格安で仕入れられる福島県産のコメが“利ザヤ”を稼ぐ格好の商品であるというのも、残念ながら事実なのだ。


そこまでするか──という驚きが無いわけではない。
でも、何を今さら、というのが正直な印象だ。

たしかに、平成23年産の福島のコメが、他県産と偽られる“産地ロンダリング”が行われる可能性は高いだろう。

単純に他県産と偽装されるだけでなく、例えば福島産コシヒカリが、南魚沼産コシヒカリの“かさ増し”や偽装のための格好の素材となるかもしれない。

南魚沼産のコシヒカリが、生産量以上に流通している──というのは、よく言われている話だ。
一説によると、じつに数十倍だともいう。

そもそも、コメの産地偽装というのは、そうした高級ブランド米ではなくとも、ごくあたりまえに行われているものだ。


また、この記事は、玄米の袋の「JAの検印」の有無が、コメの真っ当な流通の証明になるかのような印象を与えかねないが、現実には、JAを通していないコメはいくらでもあるし、そういう流通=ニセモノというわけでもない。

主に昭和以前の世代によくある誤解だが、今のコメには、ヤミ米もなければ自主流通米も無い。
収穫したコメをお上に収める食糧管理制度は、前世紀末の昔に廃止されている。
今はもう、生産者直売を行ったり、JAではない業者に売却することを“ヤミ行為”として禁じる法律は無い。


また、その袋は「精米にする前の玄米が入っていたもの」ということだから、精米して販売する米穀業者や、加工して使用する食品工場などに行くものだろう。

となると、そもそも末端の消費者は、そのコメの出自を確かめることはできない。
もっとも、そうした状況は、これまでも再三繰り返されてきたことだ。

これまでも、日本のコメ市場は“南魚沼何十倍”という状態だったのだから、あたかも福島(や東海村)の原子力事故によってこそ、偽装米、事故米が大量に流通するようになる──という切り口は、やや扇情的だ。

もちろん、単に産地や銘柄を偽装しているコメと、農薬や放射性物質に汚染された事故米は全く違う。

しかし、2008年に発覚した「事故米不正転売事件」を思い出して欲しい。

農薬や発ガン性物質に汚染された事故米が、アサヒビールの焼酎や、薩摩宝山、美少年といったブランド酒の原料となっていた事件だ。

汚染された米は、これまでも消費者のもとに届いていた。

安ければいい、なんてもいい──と呑気に構えていたら、“汚れたお米”を直接、間接的に口にしているタイミングは、これまでにもあったのだ。


たしかに、原発事故の放射能汚染によって、事故米が流通する危険は増えたのかもしれない。

そんな今だからこそ、考えなければいけないのは、安全なコメ、安全な加工食品を食べるには、どんな店でコメを買うのか、どんなメーカーの商品を選ぶのか、これまで以上に慎重にならなければいけない──ということであって“福島のコメは怖い”と、軽はずみに騒ぎ立てることではない。

この記事を掲載した「週刊プレイボーイ」や「SPA!」といった週刊誌が、ホリエモンや、小沢一郎の問題、そして今回の大震災や原発事故について、クロスメディア支配の輪の外から、ある一定の役割を果たしていることは認める。

しかし、このように、扇情的な見出し、記事を踊らせることもまた多い、ということは、読む側として意識が必要なポイントだろう。(続く)



──次回は、“その米袋、本物ですか?”“農家とコメ、JAとヤクザ”といった切り口で、コメの偽装問題を再び取り上げます。


■23年産会津米の新米予約スタート!『放射性物質未検出』の安心米をお届け!

福島県産米の出荷も始まり、通販でもこうした商品が予約を受け付けている。

15日から福島県は、会津坂下町と矢祭町で放射性セシウムの検査を実施。
結果は、国の暫定規制値(500ベクレル/kg)を大きく下回り、検査機器で検出できる10ベクレル/kg以下だった。
同様の検査が、今後県全域で行われていくという。

■福島:県内初の一般米の出荷始まる「出来は最高」──毎日新聞:2011年9月20日 11時32分 更新:9月20日 12時16分
福島県会津坂下町のJA会津みどりで20日、県内初の一般米の出荷が始まり、品質検査が行われた。全て1等米との評価で、米農家の小熊繁三郎さん(60)は「今年の米の出来は最高。ぜひ消費者のみなさんに食べていただきたい」と訴えた。