サヨナラ、二軍さん

casa_kyojin2011-11-18


引越しでいろんなものがチャラになっちゃう話」の続きを、もう一回だけ。
例によって、ひどく個人的な話です。



内田春菊がずいぶん前の作品で、“二軍の男”について描いてたことがある。

これは、いかにも内田春菊的なネーミングなんだけど、“二軍”とは、ダンナや彼氏のいる女性にばかり、ちょっかいをだそうとする男性のこと。

二軍は──ゼロから彼女を作るだけのパワーや甲斐性はない。
けれど、彼氏がいたり、結婚してても“ハードルが低い”つまりは“ユルい”オンナに順番にあたっていけば、不思議とうまくいく──そんなふうに、最初から真剣勝負をしないオトコたちのことだ。

そして、そういう男にやっと彼女ができて、晴れて“一軍”になったら、今度は自分の彼女に二軍のオトコどもが群がってくる──というのがオチだった。

いかにも内田春菊的なエピソードなんだけれど、だからといって、そう特別な話というわけでもないと思った。
むしろ、男女の別なく、若いころなら誰でも経験したことがあるんじゃないだろうか。
自分が当事者じゃなかったとしても、身の回りにそんな話が転がっていたことはあるだろう。
それこそ、“山火事”のように(「山火事」の初出:村上春樹「回転木馬のデッド・ヒート」


僕自身、二軍だったことがある。

ステディな彼女を作る、って真っ向からの勝負がどうしてもできない。
生きた球に真っ向勝負する覚悟ができないというか、試合でバッターボックスに立てないイップス状態。
そんな、やさぐれた感じ。ダメダメ、グダグダな自分のことなら、まざまざと思い返すことができる。

だから、そういう“打率”の稼ぎ方を、どうこう言うつもりはないし、今だって、誠実さを誰かに説いて語れるような、青天白日な人間でもない。

でも、そういう人たちに限って、なぜかしら一つ所に集まってるのはどうしてなんだろう(それこそ、SNSならmixiだったりとか)

その上、そういうコミュニティでは、あっちの元カノや、そっちの元カレが、順列組み合わせをいつまでもくり返してたりもするんだから、なんだかウイルス濃縮が起こりそうな感じもする。

──でも、息苦しさを感じてるのは、こっちだけらしい。

残念だけど、そういうところにいつまでも出入りしてられるほど、白髪のオッサンには体力無いよ。


そんな、関係性の“循環型社会”で、いつまでもグルグルしている人たちにも、チャオ!


あと、偉そうなことは言うつもりはないし、そんな御大層な身分でもないけど、ひとつだけ。
客商売するつもりなら、そういうのはいい加減にしといた方がいいと思うよ。

やっぱり、あともう一つ。結婚前にがっつくのも止めとこうね。






さて、“引越し”の話はこれで、おしまい。

ありがとう。
さようなら。



──そして、こんにちは。


■内田春菊「彼のバターナイフ」

内田春菊の“二軍”の話は、この本に出てきたのだったか……思い出せない。
あるいは、「私たちは繁殖している」の1巻だったかも。

「私たちは繁殖している」は、2巻、ギリギリ3巻までは痛快な妊娠、出産&育児本だった。
しかし、巻を重ねていくにつれ、前夫への罵詈雑言漫画になっていく壊れっぷりが凄まじい。
あまりのひどさは、それはそれとして見る価値があるくらいだけど、お金を払って読むものじゃない。
お金払ってホームエレクターの悪口読まされてもなあ……。

震災、原発後にその立ち位置が評価されてもいる「通販生活」だけど、前夫罵倒期に入った内田春菊に連載をさせてた、ってあたりには、なんともサヨク的、フェミ的なねじれを感じたりもしちゃうわけです。