羅川真里茂「ましろのおと」第5巻 ★★☆☆☆
現代の東京に、マレビト(稀人)として鮮烈に登場した主人公・雪。
しかしその特異な魅力が、少年誌的な学園モノ漫画の文法に取り込まれていく過程で、徐々にそのユニークな舞台設定と物語の魅力を失速させていった印象が。
一人の天才が、高校を舞台にその才能で周囲を見知らぬ世界に巻き込んでいく──という点で似た構造を持つ「ちはやふる」(末次由紀)とは違い、主人公と他の登場人物との関わりがきわめて薄く、その相互作用や、それに拠る魅力が見つけにくい。
そして、主人公と周囲の関係性の希薄さに拠る感情移入のしづらさは、この目新しく風変わりな物語の魅力をどんどんスポイルする方向に働いてしまったように見える。
また、松吾郎杯の展開が冗長なこともマイナスだ。
月刊連載ペースの読者はもちろん、コミックスでの読者にとって、このスローペースは退屈さにも結びついてしまう。
雪の東京上陸を扱った序盤は★5。
高校入学以降の展開も、合宿までなら★4を。
松吾郎杯前と、大会開幕後のダラダラとした展開や、丁寧すぎるライバルキャラの描写は、少年まんが的に無用に充実しており、過剰。
結果、この巻には★2がギリギリの評価となった。
残念、ただただ残念。