「バットマン ビギンズ」★3/5
J-Loがいつまでたってもヒスパニック女優としてのトーンで使われてるように、ケン・ワラナビも今後ずっと“アジアン色物俳優”として使われ続けちゃうのかなぁ、と漠然と不安になった。
……だからといって、本作での「ハリウッド俳優・渡辺謙」の扱いに「心底」ガッカリしているわけではない。たしかに残念だけれども、まずはこんなものなんだろう。
ただし、心配なのは、彼がこれからもニンジャ軍団と一緒にピョンピョンさせられたり、ナゾの国籍不明アジアンを演じさせられ続けることだ。まさに構造的変体アジアン映画『さゆり』でのように。
しかし、そんな心配と、『バットマン』として充分に楽しませてもらったことは全く別の話。
エピソードをきちんきちんと積み重ねていくところは、「バットマンの作り方」 といった感じで素直に楽しめる。
前シリーズの観客を巧妙にくすぐったり、納得させてくれたりと、なかなかに丁寧な見せかたをしてくれるのだから、なかなかにウマイ。
ただし、監督で脚本も書いているクリストファー・ノーランはさすがに『メメント』な人だけあって、キッチリしていて、そしてキッチリ“しすぎて”いて、構成や演出が杓子定規になっているところもあった。
例えば、ブルースのトラウマになってしまう枯れ井戸の底の「コウモリ事件」や、それが悪夢として現れるときの演出が、理路整然としすぎていて、ちっとも「ナイトメア」らしく見えない。そのへんは、文字通りバートンの方が上手だったということだろう。
また、フォックス(モーガン・フリーマン)の発明っぷり、真田技師長的用意のよさっぷりは、『007』のQのようだったり、『メン・イン・ブラック』の武器庫のように月並みな印象で、かえってサラっと右から左に抜けてしまったとも思う。
さて、そのように前4作のいわば「謎解き」をたっぷり見せてくれるわけだけれど、一方で根本的な史実に手が加えられてしまっている。
両親を殺した犯人はジョーカーではない(それどころかサッサと殺されてしまう)
最初は演出の範囲かと思ったけれど、もしかして、ベール・バットマンを、コレはコレとしてシリーズ化しようとしてる?
今度のバットマン世界にも、次作でジョーカーはちゃんと登場して、ひと騒動起こしてくれるのなら、ソレはソレとして楽しみにしたいとは思った。
単純な娯楽作としては水準以上に期待できると思う(後日付記:後から知ったけれど、ベールは複数本の撮影をするように契約しているらしい)
ただし、続編を作るなら、アクションシーンの「運動会のホームビデオ」のようなカメラワークをどうにかしてほしい。
ただただ揺れるだけ、そしてアップが多用され過ぎる。
まるで視点を変更できるアクションゲームで、画面表示を自分目線に変更し、そのまま何時間もプレイしてしまったような気分で、「見えない」と「酔いそう」のダブルパンチになってしまった。
ともあれ、ジョーカー役のキャスティングが誰になるのか、楽しみに待つことにしようとは思っている。