アンリ・シャルパンティエ 銀座本店★☆☆☆☆

casa_kyojin2006-12-01


地下のサロンの意匠と、1Fに飾られたクグロフ型などのアンティークの製菓道具のコレクションには文句無しの★5を。

そして、この店のケーキのアピアランスは、とにかく華麗の一言が似合う繊細なものだ。素材も良いのだろうし、細工も念が入っていて細かい。
 
ところが、その華麗さ、優美さに対して、肝心の味がどうしようもなく凡庸なことに困ってしまう。
洋酒などの香りがキッチリと施されたクラシカルな味は、それとして真っ当な仕事が為されている。。
しかし、スイーツの世界に数多の革新や研鑽がもたらされた現在において、特に見るべきものは無いだろう。

アピアランスがとにかく美しく、繊細なだけに、合羽橋のロウ細工のような成り立ちはとても残念だ。


しかし、そのキッチリとした仕事ぶりが存分に発揮されているのがフィナンシェやマドレーヌなどの焼き菓子だ。
コストパフォーマンスはすこぶる高く、充分な素材の吟味や、丁寧な仕事は、封を切った時の香りの立ち方でわかる。それはコキアージュなどの他の焼き菓子でも同様だ。
発酵バターまで自製してしまったというこだわりは、さすがの「神戸のアンリ」か。


というわけで、この焼き菓子とあのケーキを作っているのが同じ店、ということが心底不思議になってしまうのが正直なところだ。


そして、そんなケーキをどうしても食べるというのなら、持ち帰って家で食べることをお勧めする。


縁あってご招待され、地下のサロンでケーキをご馳走になったことがあるのだが、そのとき供された紅茶の味に大変に驚いた。
味も色もスカスカで、なまぬるい色水としか言えないような代物が出てきたのだ。ハッキリ言って、出がらしの方がまだ味がある。

もし、ご招待ということでなければ、入れ直してもらったところだが、我慢をすることにした。

何も紅茶専門店の味を期待していたわけではない。しかしあれでは、ファミリーレストランのドリンクバーで、自分でお湯を注いだ方が、よほど美味しい紅茶を飲めるだろう。


焼き菓子には★4。
ケーキはアピアランスの美しさ自体は否定できないので★2。
そして、紅茶の味は“問題外”だ。

そしてこのサロン。
秘密クラブのようなアヤシい雰囲気自体はユニークだが、小さいテーブルは二人分のケーキとティーポットで満員電車のような込み具合になってしまう上、隣のテーブルとの間隔は恐ろしく狭い。
また、スタッフの接客は慇懃ではあっても、フレンドリーな印象にはほど遠い。

結果、来店をお勧めできないという点において、★は一つしかつけられない。
テイクアウトなら、最寄りのデパ地下で充分だろう。

ともあれ、一生に一度くらいなら──ここで焼き菓子を購入し、クグロフ型などのコレクションをながめ、不思議な仕掛けの化粧室でメイクを直してくるくらいの価値は、十二分にあるのだけれど。

銀座メゾン アンリ・シャルパンティエ

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■プティ・タ・プティ(Mボックス)

チーズ味のクッキーはおつまみにも。
写真中央の“エッフェル塔”は、アイスクリームのヘラのような木製。
“実用品”だと信じているのだけれど、実際はどうなのだろう(使い方は想像されたし)